第三話


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()内は情景です。無視して構いません。



(場所・遠坂家)

時臣、「…さて、首尾は上々」

アーチャー、「(霊体化を解く)随分とつまらない些事に我を煩わせたものだな、時臣」

時臣、「恐縮であります、王の中の王…英雄王、ギルガメッシュよ」

(アーチャーは時臣を見る)

時臣、「今宵の仕儀は、英雄王の威光を知らしめ、さらに、狩り落とすべき鹿がどれなのかを見定めるべく、今後に備えた露払いでございます、どうか今暫くお待ちを」

アーチャー、「ふん、よかろう…まだ当面は、散策だけで無聊を慰められそうだ、この時代、中々どうして面白い」

時臣、「お気に召されましたか?現代の世界は」

アーチャー、「度し難いほどに醜悪だ、が、それはそれで愛でようもある、肝心なのは、ここに俺の財に加えるに値するだけの宝があるかどうかだ…もし我が寵愛に値するものが何一つない世界であったなら、無益な召喚で我に無駄足を踏ませた罪は重いぞ?時臣」

時臣、「ご安心を、聖杯は必ずや、英雄王のお気に召す事でしょう」

アーチャー、「それは我が改めて決める事、まぁいい、当面はお前の口車に乗ってやろう…この世のすべての財宝は我のモノ、その聖杯がどの程度の宝であれ、我の許しもなしに雑種が奪い合うなど見過ごせる話ではないからな…時臣、委細は任せておくぞ…(霊体化する)」

時臣、「(ため息)ふむ…やれやれ、全く…よりによってギルガメッシュが、単独行動スキル保有の、アーチャークラスに現界するとは…まぁ、当面の所は綺礼に任せておけばいい、今の所は、予定通りだ」


【OP】


ウェイバー、「アサシンがやられた!?」

(場所・ウェイバー陣営)

ウェイバー、「おいライダー!進展だぞ!?さっそく一人、脱落だ!」

(せんべいを喰らいながら戦争映画を見るライダー)

ウェイバー、「…おい」

ライダー、「ふぅん…」

ウェイバー、「おい!分かってるのかよ!?アサシンがやられたんだよ!?」

ライダー、「ふぅん」

ウェイバー、「おい!もう聖杯戦争は始まってるんだ!僕はこうして偵察しているのに…お前は毎日毎日毎日毎日せんべい齧って!ビデオ見てるだけじゃないか!!使い魔以下だぞ?ネズミ以下だ!大体必要ない時は、霊体化してろって言ってるだろ!その為の魔力だって、僕が供給してるんだぞ!?」

ライダー、「あのなぁ、暗殺者如きが何だと言うのだ、隠れ潜むだけが取り柄のアサシンなんぞ、余の敵ではあるまいに…それよりも坊主、凄いのはこれだ、これ!」

ウェイバー、「?」

ライダー、「これ、このB-2と言う黒くてデカイ奴、素晴らしい!こいつを10機ばかり購入したいのだが、どうか!?」

ウェイバー、「(深くため息)はぁ…その金で国を買い取った方が早いぞ?きっと」

ライダー、「ほう、そうか…やはり問題は資金の調達か…どっかにペルセポリスくらい富んだ都があるなら、手っ取り早く略奪するんだがのぅ」

ウェイバー、「はぁ…」

ライダー、「とりあえず、このクリントンとか言う男が当面の難敵だな、ダレイオス王以来の手強い敵になりそうだ」

ウェイバー、「ま、まぁ何にせよ、真っ先に脱落したのが、アサシンだったのは有り難い、お前はどうせ真正面から敵にぶつかっていくタイプだろ?変に奇策で足元掬おうとしてくるような奴が居なくなったのは、好都合だ!」

ライダー、「んん!?」

ウェイバー、「へ?」

ライダー、「このトマホークとか言うのも使えそうだ!」

ウェイバー、「セイバー・アーチャー・ランサーの三大騎士クラス!そして暴れるだけが能のバーサーカーは、お前のあの宝具をもってすれば、全く恐れるに足りない!あと、厄介そうなのはキャスターだ!アイツの正体さえ掴めれば、もう――」

ライダー、「アサシンはどうやられた?」

ウェイバー、「!?」

ライダー、「だから、アサシンを倒したサーヴァントだ、見ていたのであろう?」

ウェイバー、「たぶん、遠坂のサーヴァント、だと思う…姿・恰好といい、攻撃といい、やたら金ピカで派手な奴だった、ともかく一瞬の事で何が何やら@」

ライダー、「@たわけぇぇ!!」

ウェイバー、「(デコピンを喰らう)っち!!!」

(後ろに倒れるウェイバー)

ライダー、「余が戦うとすれば、それは勝ち残って生きている方であろうが、そっちを子細に観察せんでどうする!?…まぁ何でもいいわ、その、金ぴかだか何だかを見て、他に気になるような事は、無かったか?」

ウェイバー、「そ、そんな事言ったって…夜中だし、ホント一瞬の――」

(ライダーはデコピンの姿勢を見せる)

ウェイバー、「(デコピンに恐怖し)!わっ!!なぁライダー!サーヴァントの宝具って、普通は一つ限りだよな!?」

ライダー、「原則としてはな、ま、宝具を数で捉えようとするのは意味が無い、知っておろうが、宝具というのは、その後英霊に纏わるとりわけ有名な故事や、逸話が具現化したものであって、一つの特殊能力、一種類の攻撃手段と言った場合もある」

ウェイバー、「じゃあ、剣を、10本も20本も投げつける宝具ってのも、アリか?」

ライダー、「無数に分裂する剣、か…ふむ…有り得るな、それは単一の宝具として、定義し得る能力だ」

ウェイバー、「…(心中)でも、あれが分裂したと言うには、あまりに一つ一つの形が違いすぎる…」

ライダー、「まぁ良いわ、敵の正体なんぞは、いずれ相見えた時に知れる事だ、ふん!」

(ウェイバーの背中を叩く、それも思いっきり)

ウェイバー、「っだあっっ!!!!(むせる)げほっごほっ…そ、そんなんで良いのかよ?」

ライダー、「よい!寧ろ心が躍る!!食事にセックス!眠りに戦!…何事につけても存分に楽しみ抜く、それが、人生の秘訣であろう…むふふふ…さぁ!ではそろそろ、外に楽しみを求めてみようか、出陣だ坊主、支度せい!!」

ウェイバー、「しゅ、出陣って…どこへ?」

ライダー、「どこか適当に、そこら辺へ」

ウェイバー、「ふざけるなよー!」

ライダー、「遠坂を見張っていたのは貴様だけではあるまい、となれば、アサシンの死も知れ渡っていよう、ここからは他の連中が一斉に動き出すぞ?…其奴らを見つけた端から狩って行く」

ウェイバー、「見つけて狩るって、そんな簡単に――」

ライダー、「余はライダー、こと足に関しては他のサーヴァントより、優位におるぞ?(剣を抜き)ふふっ!」

(チャリオットを呼びだす)

ウェイバー、「待て待て待てここじゃマズイ家が吹っ飛ぶ!!!」


(場所・教会)

綺礼、「サーヴァント消失、マスターの権利失効に類し、聖杯戦争は継続不能、約条に従い、言峰綺礼は、聖堂教会による身柄の保護を、要求します」

璃正、「受諾する、監督役の責務に則って、言峰璃正が、貴方の身の安全を保障する、さぁ奥へ」

綺礼、「父上、誰かこの教会を見張っている者は」

璃正、「無い、ここは、中立地帯として不可侵が保障されている、余計な干渉をしたマスターは、教会からの諌言がある」

綺礼、「では、安泰と言う事ですね」

璃正、「うむ」

綺礼、「念の為、警戒は怠るな、常に一人はここに、配置するように」

女アサシン、「はっ、かしこまりました」

綺礼、「現場の、監視をしていた者は?」

女アサシン、「私が確認したところ、異なる気配の使い魔は4種類」

璃正、「一昨日、最後のサーヴァント、キャスターの現界を確認した、此度の聖杯戦争のサーヴァントは、全て出揃っている筈だが…」

綺礼、「一人足りないか…出来れば、全てのマスターに見せておきたかった所だが…」

男アサシンT、「今の局面で御三家の邸宅を監視する事は、マスターとして当然の策でございましょう」

男アサシンU、「その程度の用心も怠るような者であれば、どの道我らアサシンを警戒する神経など持ち合わせておりますまい…くくくっ」

男アサシンV、「アサシンが排除されたものと油断しきっているマスター達の背後に」

全アサシン、「我ら影の英霊は、今度こそ、本物の影になる…」

璃正、「これで戦端は開かれた…いよいよ始まるぞ?第四次聖杯戦争が、この老骨も、今度こそ、奇跡の成就を見届けられそうだ…」


【CM】


(場所・空港)

アイリ、「ここが…切嗣の生まれた国…どう?セイバー、空の旅の感想は」

セイバー、「別段どうという事も…期待していたよりは、味気ないものでした」

アイリ、「英霊ともなれば、空を飛ぶくらい驚くほどでもないかしら?」

セイバー、「そういうわけでは…サーヴァントは現界する際に、現代の知識を与えられますから、いざとなれば、この飛行地と言う機械を乗りこなす事も可能です」

アイリ、「操縦…出来るの!?」

セイバー、「私の騎乗スキルは、幻獣・神獣を除いて、乗り物と言う概念全てに適応される能力ですから、鞍に跨り手綱を握れば、あとは直感で何とかなります」

アイリ、「鞍に跨り手綱を…ふふっ」

セイバー、「私は…笑われるような事を言いましたか?」

アイリ、「(笑いをこらえて)ううん…」

(一行、移動中)

アイリ、「凄い活気ね…」

セイバー、「既に切嗣も、この地に辿り着いてる手筈でしたね」

アイリ、「えぇ、半日早くね、でも、向こうから見つけてくれるから大丈夫よ、当面は状況の変化を見極めながら、柔軟に、臨機応変に、折角の日本だもの、戦いが始まる前に、満喫しておかないと」

セイバー、「危険です、どこかに拠点を構えてから、切嗣を交えて、一旦方策を積めるべきです」

アイリ、「それは、そうだとは思うけれど…勿体無いじゃない?せっかくこんな遠い国に来たんだし、それに…私ね、初めてなの」

セイバー、「…は?」

アイリ、「だから…外の世界を出歩くのは…これが、初めてなの…」

セイバー、「では貴女は、これまでの生涯を、ずっとあの城で?」

アイリ、「(無言でうなずく)…私は聖杯戦争の為に作られた人形だったから…もちろん、何も知らない訳じゃないのよ?切嗣が、映画とか写真とか、外の世界の景色や出来事をいっぱい教えてくれたもの…でも、この目で本当に世界を見るのは、これが初めて…だから…っごめんなさい、はしゃぎ過ぎちゃった!(ほくそ笑む)」

セイバー、「(思案し)…止めてください」

(車を止める)

セイバー、「私とて、この町を歩くのは初めての経験ですが」

(セイバーは車を降り、アイリ側のドアを開ける)

セイバー、「エスコートは騎士の役目、及ばずながら努力します(手袋を抜いて)さ、どうか」

アイリ、「…ふっ(微笑む)」


(冬木市内の某ホテル、切嗣のセーフハウス、合図のノックで切嗣は入った)

舞弥、「装備品一式、全て到着しております、マダム達も既に冬木に到着し、動き始めています、これで他のマスターたちは、マダムをセイバーのマスターだと思い込む事と」

切嗣、「分かった」

舞弥、「昨夜、遠坂邸で動きがありました、記録した映像です」

(昨夜アサシンが殺害された様子を記録した使い魔の映像を見る)

切嗣、「この展開、どう見る?」

舞弥、「出来過ぎの様に思えます、アサシンの侵入から、遠坂のサーヴァントの攻撃までのタイムラグが、短すぎます、気配遮断スキルを持つアサシンを、事前に察知できたとは思えませんし…侵入者がある事を、承知していたのではないかと…」

切嗣、「サーヴァント戦では、英霊の正体を秘匿するのが鉄則だ、何故遠坂は、みすみすサーヴァントを晒すような真似をした?」

舞弥、「見せる意図があった、と言う事でしょうか?」

切嗣、「うむ…舞弥、アサシンのマスターはどうなった?」

舞弥、「昨夜の内に教会に避難し、監督役が保護下に置いた旨、告知されました、アサシンのマスターは、言峰綺礼」

切嗣、「!?舞弥、冬木教会に使い魔を放っておけ」

舞弥、「良いのですか?教会の不可侵地帯にマスターが干渉するのは、禁じられている筈ですが…」

切嗣、「監督役の神父にバレないよう、ギリギリの距離をうろつかせておけば良い…」

舞弥、「はい、分かりました」

(舞弥が調達した装備品を改める)

切嗣、「預けておいた奴は、どこだ」

舞弥、「こちらに」

(最後に30.06-スプリングフィールドコンテンダーの換装時間を計る)

切嗣、「2秒ってところか…衰えたな」

舞弥、「はい」

切嗣、「そこのワルサーよりも…イリヤの体重は、軽いんだ…もう…八歳になるのに…」

舞弥、「今必要な事だけに、意識を向けてください…(キスをする)余計な事は…考えないで…」


(海辺についたアイリ一行)

アイリ、「(海を見て)素敵…まるで、夜空の合わせ鏡みたい…」

(海辺を歩くアイリ)

アイリ、「殿方に付き添われて、見知らぬ町を歩くのは、とても楽しいわね…」

セイバー、「殿方の擬い物で事足りましたか?」

アイリ、「非の打ち所も無かったわ、今日の貴女はとっても素敵なナイトだったわよ」

セイバー、「光栄です、姫」

アイリ、「セイバー…海は好き?」

セイバー、「好きと言われると、どうだか…私の時代の、私の国では…海の彼方は、常に夷狄の押し寄せてくる場所でしたから…忌々しく思う事はあっても、憧れた事はありません…」

アイリ、「何だか申し訳ないわ、貴女だって同じ女なのに…アーサー王として生きてきた貴女には、こんな風に楽しむ余裕なんて無かったのよね…」

セイバー、「(首を振る)…アイリスフィールこそ、本当は私ではなく、切嗣と町を歩きたかったのでは無いですか?」

アイリ、「あの人は…駄目よ…辛い思いをさせてしまうわ」

セイバー、「!?切嗣は、貴女と過ごす時間を楽しまないのですか?」

アイリ、「あの人は、幸福である事に…苦痛を感じてしまう人だから…」

セイバー、「(どこか遠くを見るアイリを眺めていると、遠くから魔力を感じる)!?」

アイリ、「…敵のサーヴァント?」

セイバー、「はい…100m程先の物陰から、気配を漂わせています…どうやら、我々を誘っている様ですね…」

アイリ、「律儀ね…戦う場所を選ぼうってわけ…御招きに与るとする?」

セイバー、「!?望む所です」


(場所・冬木大橋の上)

ウェイバー、「ライダー…速く、降りよう…ここ…速くぅ!!」

ライダー、「何を言う、見張るには誂え向きの場所ではないか」

ウェイバー、「お、降りる!いや降ろせ!!も…もういや…」

ライダー、「落ち着きの無い奴め…座して待つのも戦の内だぞ?」

ウェイバー、「帰りたい…イギリスに帰りたい…」

ライダー、「そう急くなと言っておろうに…ほれ!状況もようやく動き出しそうだぞ?」

ウェイバー、「…?」

ライダー、「ぬははははっ!!盛り上がってきたわい!!」


(場所・沿岸コンテナ群)

ランサー、「よくぞ来た、今日一日、この町を練り歩いて過ごしたものの、どいつもこいつも穴熊を決め込むばかり…」

(二人の前に現れるランサー)

ランサー、「俺の誘いに応じた猛者は、お前だけだ…」

(セイバーが立ちふさがり、アイリを守る)

ランサー、「その清澄な闘気…セイバーと御見受けしたが、如何に」

セイバー、「如何にも、そういうお前は、ランサーに相違ないな?」

ランサー、「ふっ…これより死合おうと言う相手と、尋常に名乗りを交わす事もままならぬとは…興の乗らぬ縛りがあったモノだ…」

(二人のサーヴァントは、互いに戦闘態勢へと入る)

アイリ、「セイバー、気をつけて、私でも治癒魔術ぐらいのサポートは出来るけど…でも、それ以上は――」

セイバー、「ランサーはお任せを…ただ、相手のマスターが姿を見せないのは気がかりです、妙な策を弄するかもしれない、注意しておいてください…アイリスフィール、私の背中は、貴女にお任せします」

アイリ、「分かったわセイバー、この私に、勝利を」

セイバー、「はい、必ずや」


【第三話:冬木の地】




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