(シャッターを破壊し、中から大男が現れる)
ウェイバー、「!?…ライダー?(状況をやっと理解し)…バカ!シャッター蹴破って出てくるなんて何考えてんだ!なんで入る時みたいに霊体化しないんだよ!?」
ライダー、「霊体のままでは、これを持って歩けんではないか、そううろたえるでない!まるで盗人か何かのようではないか」
ウェイバー、「盗人じゃなくて何なんだよお前!」
ライダー、「大いに違う、闇に紛れて逃げ去るのなら、匹夫の野党、凱歌と共に立ち去るのならば、それは!征服王の略奪だ!」
ウェイバー、「ちっ!これで良いだろ!?さぁ消えろ!今消えろ!すぐ消えろぉ!!」
ライダー、「応!では荷運びは任せた、くれぐれも落とすなよ?」
(ライダーは霊体化し、ひとり憤る)
ウェイバー、「…あぁもう…どうしてこうなるんだよ!」
【OP】
ウェイバー、「(走る)ハッハッハッハッ…ハァ…ハァ…ハァ…しょ…召喚に成功したってのに…なんで僕がこんな目に…大体何なんだよこの本は…(本を取られる)ん?」
ライダー、「戦の準備をすると言っただろう…戦に地図は必要不可欠だからな」
ウェイバー、「?…」
ライダー、「オイ坊主、マケドニアとペルシャはどこだ」
ウェイバー、「な…なんだその態度は!僕はお前のマスt―――」
(ライダーはウェイバーに眼を飛ばす)
ウェイバー、「(尻ごみする)…ひっ…」
ライダー、「貴様が余のマスターだと言う事くらい分かっておるわ!ちゃんと契約も交わしたではないか」
ウェイバー、「…うん…」
ライダー、「それより、かつての余の領土はどこかと聞いておるのだ」
ウェイバー、「…この辺かな」
ライダー、「ふむ…」
ウェイバー、「?…」
ライダー、「@むははははははははっ!!!!」
ウェイバー、「@!?」
ライダー、「小さい!!あれだけ駆け回った台地がこの程度か!よいよい、胸が高鳴る!では坊主、今我々が居るのはこの地図のどこなのだ?」
ウェイバー、「…ここだよ」
ライダー、「ほほぅ、丸い大地の反対側か、うむ!これまた痛快!これで戦の指針も固まったな」
ウェイバー、「指針て?」
ライダー、「まずは世界を半周する!西へ、ひたすら西へ!通りがかった国は全て、落としてゆく!そうやって、マケドニアへ凱旋し、故国の皆に、余の復活を祝賀させる…むふふふ…心躍るであろう!!」
ウェイバー、「…お前何しに来たんだよ!聖杯戦争だぞ?聖杯!」
ライダー、「うむ!そうだ、聖杯と言えば、最初に問うておくべきだった…坊主、貴様はどう聖杯を使う?」
ウェイバー、「な、なんだよ、改まって…そんなこと聞いてどうする?」
ライダー、「もし貴様も世界を獲る気なら、即ち余の仇敵ではないか…覇王は二人と要らんからな…」
ウェイバー、「せ、世界征服なんて!…ぼ、僕が望むのはな…!ひとえに正当な評価だけだ…ついぞ僕の才能を認めなかった時計塔の連中に…考えを改めさせる事だA!!」
ライダー、「A小さいわB!!!」
ウェイバー、「Bぶぅわ!だぁ…!」
ライダー、「小さい!狭い!アホらしい!戦いに賭ける大望が、己の沽券を示す事のみだと?貴様それでも余のマスターか!?全くもって嘆かわしい!!」
ウェイバー、「(ぶたれた所をさする)…」
ライダー、「そうまでして他人に畏敬されたいと言うのなら…」
(ウェイバーを持ち上げる)
ウェイバー、「!?うわ…!?」
ライダー、「貴様はまず…聖杯の力で、あと30cmほど背丈を伸ばしてもらえ」
ウェイバー、「(心中)こんのぉ…たかがサーヴァントの分際で…思い知らせてやる…(右手を差し出す)令呪に告げる…聖杯の規律に従い、この者、征服王イスカンダルに…くっ…落ち着けウェイバー、マスターが与えられた令呪で、サーヴァントを強制的に操れるのは、たったの三回…令呪を全て失ったら、僕はこいつを制御できなくなる…」
(令呪使用を中断する)
ウェイバー、「聖杯さえ手に入るなら、それで文句は無い、そのあとでお前が何をしようと知らなCい」
ライダー、「Cあぁもう!!聖杯はちゃんと余が手に入れてやる!」
ウェイバー、「随分自信があるみたいだけど?お前何か勝算はあるのか?」
ライダー、「つまり貴様は、余の力が見たいと?」
ウェイバー、「と、当然だろ!お前を信用していいのかどうか、証明してもらわないとな!?」
ライダー、「…ふっ」
(ライダーは剣を抜いた)
ライダー、「征服王イスカンダルが、この一斬にて覇権を問う!はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ウェイバー、「うわ…ん?」
(街灯が不自然に点灯し、ついに切れた時、雷鳴が轟く)
ウェイバー、「!?」
(雷雲からウェイバー達に一閃落ちる、ウェイバーは衝撃で後ろに倒れる)
ウェイバー、「わっ!…?」
(落ちてきた雷から一騎の戦車が現れる)
ウェイバー、「な!?…」
ライダー、「ゴルディアス王がゼウス神に捧げた供物でな、余がライダーの座に据えられたのも、きっとこいつの評判のせいであろう、聖杯が欲しいなら、さっさと英霊の一人や二人、居場所を突き止めて見せんかい!それまでは、地図でも眺めて無聊の慰めとするが…まぁ、文句はあるまい?」
ウェイバー、「…うんうん…」
(場所・アインツベルン城外)
イリヤ、「よぉし、今日こそは絶対に負けないからね!」
切嗣、「(笑みを浮かべて)ふっ…」
イリヤ、「(くるみの芽を探す)…」
切嗣、「…おっ、見つけた」
イリヤ、「!?ウソ!どこどこ!?私見落としたりしてないのにー!」
切嗣、「今日一個目のくるみの冬芽だ、ふふふっ、先取点だな」
イリヤ、「むっ…負けないもーん!」
切嗣、「ふふっ」
イリヤ、「…あ、あった!…わぁ…イリヤもいーっこみーつけた!」
切嗣、「父さんも二個目を見つけたぞ?」
イリヤ、「?…ふぇ!?」
(切嗣が見つけた冬芽を見る)
イリヤ、「えー?あの枝クルミじゃないよ?」
切嗣、「いやいやイリヤ、あの枝は、沢胡桃と云ってだな、くるみの仲間なんだよ、だからあれも、くるみの冬芽だ」
イリヤ、「ふん…」
切嗣、「ん?」
イリヤ、「ずっるーい!ずるいずるいずるーい!切嗣ずーっとずるしてたー!!」
切嗣、「だってなぁ、こうでもしないと…父さん勝ち目ないし…」
イリヤ、「そういうずるい事ばっかりやってたら、もう切嗣と遊んであげないんだから!」
切嗣、「そりゃ困る!ごめんごめん…謝るよ…」
イリヤ、「もうずるしないって約束する?」
切嗣、「するする」
イリヤ、「よろしい、なら、また勝負してあげる、チャンピオンはいつでも挑戦を受けるのだ!」
切嗣、「はい、光栄であります…御姫様!」
イリヤ、「う!?うわーっ!高い高ーい!」
(城内)
アイリ、「何を見てるの?セイバー」
セイバー、「外の森で、御息女と切嗣が戯れていたもので」
アイリ、「意外だった?」
セイバー、「私のマスターは、もっと冷酷な人物だという印象があったので」
アイリ、「まぁ…それは無理もないわよね…」
セイバー、「…あれが切嗣の素顔だと言うのなら…私はマスターから、よほど不興を買ったのでしょうね」
アイリ、「ふ…ふふっ」
セイバー、「アイリスフィール!何も笑う事は無いでしょう!」
アイリ、「ごめんなさいね、召喚された時のこと、まだ気にしているのかなーと思って」
セイバー、「…些か…確かに私は男として振る舞っていましたが、何も二人揃って、あれほど驚く事もないでしょう…」
アイリ、「そうは言ってもね…仕方が無いのよ…貴女の、アーサー王の伝説は、あまりに有名なんだもの…」
セイバー、「切嗣には、私の正体が女であったが故に、侮られているのでしょうか」
アイリ、「それはないわ、でも…そうね…彼が腹を立てているとするなら、それは別の理由でしょうね」
セイバー、「別の?」
アイリ、「多分あの人は、貴女を囲んでいた人たちに対して、腹を立てているのね…小さな女の子に、王と言う役目を押しつけて良しとした、残酷な人たちに…」
セイバー、「それは是非も無い事でした、岩の剣を抜く時から…私も覚悟を決めていた」
アイリ、「そんな風に貴女が運命を受け入れてしまったのが、尚の事腹立たしいのよ…」
セイバー、「それは出過ぎた感傷だ…私の時代の、私を含めた人間たちの判断について、そこまでとやかく言われる筋合いは無い…」
アイリ、「だから黙ってるのよ、あの人は…」
セイバー、「…」
アイリ、「衛宮切嗣と、アルトリアと言う英雄とでは、どうあっても相容れないと…そう、諦めてしまっているのね…」
セイバー、「(随分間を空ける)聖杯の力によって、世界を救済したい…それが、貴方と切嗣の願いでしたね」
アイリ、「えぇ…私のは、あの人の受け売りでしかないけれど」
セイバー、「私が聖杯に託す願いも、また同じです」
アイリ、「?」
セイバー、「この手で守りきれなかったブリテンを、私は何としても救済したい…貴女と切嗣が目指すものは、正しいと思います…誇ってよい道だと」
アイリ、「…(微笑む)」
(場所・とあるマンション)
龍之介、「(リズミカルに)閉じよ閉じよ閉じよ(みたして)閉じよ…繰り返すつどに四、度…あれ、五度?えーっと、ただ満たされる刻を破却する、だよな?」
(改めて足で陣を形成する)
龍之介、「…うん、閉じよ閉じよ閉じよ(みたして)閉じよ(みたして)閉じよっと、@ハイっ今度こそ五度ね、オッケー?ん?」
女性ニュースキャスター、「@では次に、繰り返し報道しております冬木市連続猟奇殺人事件の続報です、これまで起こった三件の殺害現場全てに、被害者の血で描かれた、魔方陣と思われる謎の図柄が残されていた事がA捜査官の発表で明らかになりました、描かれた魔方陣は一体何を意味するものなのか、本日は、犯罪心理にお詳しいきょuB」
龍之介、「Aちょーっとハメを外し過ぎちゃったかもな〜」
(被害者の遺体がずれ落ちる)
龍之介、「(Bテレビを切る)ふっ…悪魔って本当にいると思うかい?坊や、新聞や雑誌だとさ〜、よく俺の事悪魔呼ばわりしたりするんだよね〜でもそれってもし本物の悪魔が居たりしたら、チョットばっかり失礼な話だよね?そこん所スッキリしなくてさ…Cチャーッス!!雨生龍之介は悪魔でありまーす!」
子供、「Cヒッ!」
龍之介、「なーんて名乗っちゃって良いもんかどうか…そしたらこんなもの見つけちゃってさっ、うちの土蔵にあった古文書?みたいなやつなんだけどさ…どうも、うちのご先祖様、悪魔を呼びだす研究をしてたみたいなんだよねー、そしたらさ、本物の悪魔がいるのか確かめるしかないじゃん?でもねェ…万が一本当に悪魔とかが出てきちゃったらさ、何の準備もなくて茶飲み話だけってのも、間抜けな話じゃん?…だからね、坊や、もし悪魔さんがお出まししたら…一つ殺されてみてくれない?」
子供、「(口を塞がれたまま叫ぶ)」
龍之介、「ふっ、はははははは!!悪魔に殺されるのってどんなだろうね!?貴重な体験だと(手が痛む)痛っ!なんだ…これ…」
(令呪が宿り、陣が作動する)
龍之介、「!?…あ…っ」
キャスター、「問おう、我を呼び、我を求め、キャスターのクラスの寄り代に現界せしめた召喚者、貴殿の名をここに問う、其は…何者なるや?」
龍之介、「(呆気にとられる)…あ、えっと…えと雨生龍之介っす、職業フリーター、趣味は人殺し全般、子供とか若い女とか好きです」
キャスター、「よろしい、契約は成立しました、貴殿の求める聖杯は私もまた悲願とする処、かの楽園の釜は必ずや、我らの手にする所となるでしょう…」
龍之介、「せい…はい?まぁ、とりあえずお近づきに御一献どうですか?(先の子供に向け)あれ、食べない?」
子供、「(察して叫び出す)」
キャスター、「ふむ…(懐から何かを取りだす)」
龍之介、「ん?(キャスターの取り出した本を見る)あ、すげー!それ人間の皮でしょ!?」
キャスター、「(本を開けて読む)クトゥルフムグルゥナフ」
龍之介、「(理解不能な言葉に)あ?」
(キャスターは子供に近づき子供は叫びながら死を直感するが、手の拘束をキャスターは解いた)
キャスター、「怖がらなくても良いんだよ?坊や(子供の表情の変化を見て)うん…」
龍之介、「(予想に反した行動に呆れる)…」
キャスター、「立てるかい?」
(拘束を全て解かれた子供は立ち上がる)
キャスター、「さぁ坊や、あそこの扉から部屋の外に出られる、一人で行けるね?」
子供、「うん…」
キャスター、「うん」
龍之介、「(子供が出ていく所を見かねて)なぁちょっと!」
キャスター、「(静かにさせる)しーっ…」
(部屋から出た子供は電気のついた明るい廊下を眺めて助かったと思った、だがその時後ろから怪物に襲われる)
子供、「(悲鳴)ウワァアァァァァァ!!!!!」
龍之介、「うわ…」
キャスター、「(嬉しそうに)ふむ…」
(部屋の彼方から子供の悲鳴は止む)
キャスター、「恐怖と言うものには鮮度があります、怯えれば怯えるほどに感情とは死んでゆくものなのです、真の意味での恐怖とは、静的な状態ではなく変化の動態、希望が絶望へと切り替わるその瞬間の事を云う…いかがでしたか?瑞々しく新鮮な恐怖と死の味は?」
龍之介、「ぬぬぬぬぬぬぬ…クール!!!最高だ!超クールだよアンタ!OKだ!聖杯だか何だか知らないが、ともかく俺はアンタに着いて行く!さぁ殺そう!もっともっとクールな殺しっぷりで、俺を魅せてくれ!!」
キャスター、「ほ、龍之介と言いましたか、貴殿の様な理解あるマスターを得られたのは幸先が良い…これはいよいよ我が悲願の達成に期待が持てそうです…」
龍之介、「あ、そう言えば、俺まだアンタの名前聞いてない」
キャスター、「名前ですか、そうですねこの時代で通りの良い呼び名とゆえば…うん!では一先ず、青髭とでも名乗っておきましょうか…」
(場所・冬木市森林区間)
綺礼、「聖堂教会から、七体目のサーヴァント、キャスターが現界したとの、連絡があった」
アサシン、「最後のサーヴァントが召喚されましたか、ではいよいよ」
綺礼、「そういう事だ、早速だがお前にはこれから、遠坂邸へ向ってもらおう」
アサシン、「…と、申しますと?」
綺礼、「お前ならば、あの遠坂邸の要塞のような魔術結界も、恐るるに足りぬだろう」
アサシン、「ふふふっ、よろしいのですか?遠坂時臣とは同盟関係と聞いておりましたが?」
綺礼、「それは考慮しなくていい、例えアーチャーと、対決するハメになろうとも、恐れる必要は無い」
アサシン、「三大騎士クラスのアーチャーを恐れる必要は無いと仰るとは…」
綺礼、「任せたぞ?速やかに遠坂時臣を…抹殺しろ」
(遠坂家に侵入し、魔術結界の中枢たる台に一気に到着する)
アサシン、「他愛ない…」
(台に取り付けた宝石に手を伸ばしたその時、手に槍が突き刺さる)
アサシン、「ぐっ!?がぁぁぁあ!!」
アーチャー、「地を這う虫けら風情が、誰の許しを得て面を上げる?」
(顔を上げる間も無く、アサシンはアーチャーの宝具投擲を喰らう)
アサシン、「あれを…恐れる事はない…だと…!?(顔に直撃する)ぐはっ!」
アーチャー、「貴様は我を見るに能わぬ、虫けらは虫けららしく、地だけを眺めながら…死ね」
【第二話:偽りの戦端】