幻想魔伝最遊記28話


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観世音菩薩と玉面公主の台詞のみです



菩薩、「はぁ、いよいよ行動開始か」

二郎神、「観世音菩薩、本当にこのままで良いのですか」

菩薩、「何が?」

二郎神、「色々と手を講じることも有りましょう。天帝にご報告申し上げるとか、天界軍を動かすとか」

菩薩、「二郎神。お前にしては笑えるなぁ、その冗談」

二郎神、「じょ、冗談!?」

菩薩、「天界軍の仕事は、天界に害を及ぼす下界の奴等を封印することだ。つまり、天界に何らかの影響が無い限り、天界軍は動かさねぇよ。それに奴等がやっている事、見た目は一応妖怪退治だ。天帝は感謝こそすれ、討伐命令なんて下す訳ねぇさ。ましてやアノ闘神焔太子は天帝の一族でもある。天上人と人間のハーフだがなぁ」

二郎神、「で、ですが…」

菩薩、「神と人間の子供は、妖怪と人間の子供と同様に、禁忌とされている。忌むべき存在に対して天界は、かつての哪吒の様に、上浄な役回りを全部押し付けてきたわけだ。それを今更、天界軍だの天帝だのが、四の五の言えた義理じゃあないだろ?《

二郎神、「ですが、いずれ奴等が我々に反旗を翻すのは日を見るより明らか」

菩薩、「平和ボケしたココに、その事に気付く奴は居ない。気付いた時はもう後の祭り。どうする事も出来なくなって、ココの奴らは大慌てする。いつものパターンさ」

二郎神、「そんな!そこまで分かって居らっしゃるなら、観世音菩薩自らが―――」

菩薩、「はっ、冗談だろ?この俺が、こんな楽しい事中断させる訳ねぇじゃん」

二郎神、「っ…」

菩薩、「まぁ、高みの見物と行こうか」

二郎神、「し、しかし…」

菩薩、「ふっ、ま、当分の間退屈しのぎが出来そうだなぁ?」

金蝉、「誰だったか忘れたが下界の人間が言っていた、退屈は人を殺せる。だがここには死さえ存在しない…脳みそが常温のまま解けてゆく」

金蝉、「ふっ」

菩薩、「クソつまんねぇなって、顔に書いてあるぜ?金蝉」

金蝉、「ん?」

金蝉、「余計な御世話だ」

菩薩、「相変わらず口の聞き方を知らん奴だな。天下の観世音菩薩に向かって」

金蝉、「自分で言うな、冷やかしに来たんなら帰れよ、仕事が残ってんだ」

菩薩、「ロクに目も通さず、ハンコ押してくだけの書類だろう?」

金蝉、「ちっ」

菩薩、「付いて来い。エガンギョウジャが、下界で面白い動物を拾ってきたそうだ」

金蝉、「動物?」

菩薩、「あぁ、小さいくせに獰猛な、黄金の眼をした動物だ」

菩薩、「能書きは良い、下界からのアノ幼児を連れて来たんだろう?」

金蝉、「岩から生まれた?」

菩薩、「つまり、人間でも妖怪でもない、大地が生んだ生き物さ」

金蝉、「確かに動物だ、っつうより野猿みたいじゃねェか」

菩薩、「…で、この事態。お前だったらどうする?哪吒」

菩薩、「焔はお前がそうなった後、闘神太子を引き継いだ男だ。お前と同じ、上浄なものとして天上界に利用され続けてきた。天上人の無殺生の原則を免除され、殺戮を許されていた異端の存在…お前も痛いくらいに悲しかったが、アイツも悲しい男だぜ。」

菩薩、「…あぁ、確かにそうだな。」




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