キャスター、「明日の朝、お迎えにあがります、皆さんご一緒に、愉快に過ごしましょう」
(モノクロカラーで放送された20世紀博からのお知らせは、あっという間に終わり、いつものテレビの戻った)
しんのすけ、「何今の、あれだけ?」
(テレビの電源が切れる)
しんのすけ、「え?…お?」
(ひろしとみさえが上気味に立ち上がり、口ずさむ)
ひろし、「明日に備えて早く寝なきゃ」
みさえ、「…そうね」
しんのすけ、「え?…寝るの?ご飯食べないの?…ねぇかーちゃん!オラ腹減ったぁー!」
(しんのすけの言葉を無視し、ひろし達は寝室へとゆっくり向かう)
しんのすけ、「ねぇかーちゃんってばぁ!!」
(先に寝室に向かっていたみさえは、冷蔵の前だ立ち止まり、何かを取りだした)
みさえ、「ふん」
しんのすけ、「え?…(キッチンの電気も切れる)えぇ…?なにこれ?」
みさえ、「ネギ」
(みさえとひろしは寝室で掛け布団だけを引き抜いて寝た、しんのすけとひまわりは、それをただ眺める事しか出来なかった)
(朝、しんのすけは愕然としていた、ひろしとみさえが黙々とお菓子を食べていた)
しんのすけ、「(唖然とする)…とーちゃんかーちゃん何やってんだ!」
(ひろしの目の前のイスをよじ登るしんのすけ)
しんのすけ、「朝からお菓子なんか食べていいの!?」
ひろし、「うっせーな腹減ってんだよ」
しんのすけ、「オラだって腹減ったぞ!かーちゃん何でご飯作んないんだ!」
みさえ、「何で私が?アンタ自分で作れば?」
しんのすけ、「うぅ?…うわぁー!」
ひろし、「何だよいちいちデケぇ声出すんじゃねぇよ」
(ひろしの手にはしんのすけの大好物であるチョコビが握られていた)
しんのすけ、「それ!オラのとっておきのロイヤルチョコビだぞ!勝手に開けるなー!」
ひろし、「があ」
しんのすけ、「あぁー!」
ひろし、「(口いっぱいに菓子を詰め込む)もぐもぐ…(そのままジュースで流しこんでいる)ごくごく…っだあぁー!!へへっ」
(食べ終えたひろしはリビングへ歩いて寝た)
ひろし、「あぁー」
みさえ、「(ジュースを飲み干す)ゴクゴク…ぱっ!」
しんのすけ、「ほい、あーん」
ひまわり、「あーん」
しんのすけ、「あむ…あむ…」
(ひまわりに流動食を食べさせるしんのすけはリビングで日向ぼっこしてるひろし達に怒りを感じていた)
しんのすけ、「んー…もう!とーちゃんもかーちゃんも変だぞ!」
しんのすけ、「いつもみたいにしろ!ご飯作れ!歯磨け!顔洗えー!」
みさえ、「やだ」
しんのすけ、「!?(ひろしの方へ走る)朊着替えろ!ヒゲ剃れ!会社行けー!」
ひろし、「やだね」
しんのすけ、「え?…何で?今日お休みじゃないでしょ?お仕事しなくて良いの?朝一会議とか、外回りとか接待とか…」
ひろし、「おい!」
しんのすけ、「!?」
ひろし、「大人は会社行かねぇといけねぇって決まりでもあんのか?国会で青島幸男が決めたのか?えぇ!?」
しんのすけ、「…っもう良い!オラ幼稚園行く!」
ひろし、「あぁ行け行け、どこでも行っちまえ!」
みさえ、「もう帰ってこなくていいわよ」
しんのすけ、「(着替えながら)もう、とーちゃんもかーちゃんもどうかしてるぞ…ん?」
ひまわり、「たぁ」
(着替えたしんのすけは、ひまわりを背負って玄関先でバスを待っていた)
しんのすけ、「バス、遅いぞー…」
ひまわり、「たいやいやい!」
しんのすけ、「あーよしよし良い子良い子…もうすぐお迎えが来るからねー、うーん…ん?」
(窓から睨みを利かせてしんのすけ達を家に戻さないようにするひろし達)
しんのすけ、「行くぞーひま!」
ひまわり、「たぁ?」
(三輪車で幼稚園へと向かったしんのすけ、ところがその道中、奇妙な光景が広がった)
住民、「しーい、ごーお、ろーく、しーち、はーち、きゅーう、じゅーう」
住民、「かーごめかーごめ、かーごのなーかのとーりーは、いーついーつ」
(隣のおばちゃん、本屋の店員さん、近所の大人達が子供のように遊んでいるのである、違和感を募らせつつ、幼稚園に着いたが、誰ひとり、園児が居なかったのだ)
園長先生、「よーし!」
しんのすけ、「ん?」
園長先生、「缶けりやるぞー!」
園長&先生達、「じゃんけんぽん」
しんのすけ、「ねぇねぇ」
園長&先生達、「あいこでしょ!あいこでしょ!」
しんのすけ、「ねぇねぇ!!」
園長&先生達、「あん?」
しんのすけ、「う…!」
まつざか先生、「誰よこいつ」
よしなが先生、「忘れた」
園長先生、「確か、し…し…」
よしなが先生、「しんたろう?」
園長先生、「そうそれだ!しんたろう!」
しんのすけ、「オラしんのすけだぞ!わざと間違えないでよ!」
まつざか先生、「ワザとじゃないもーん」
よしなが先生、「邪魔しないでしんたろう」
園長先生、「ほらっしっし」
まつざか先生、「しんたろうなんか仲間に入れてあげるもんか(べロを出す)べーっ!」
園長&先生達、「べー!」
(園長先生達が遊んでいる中、突如どこからともなく音楽が流れていた)
しんのすけ、「…ん?」
(その音楽を聞いたやいなや、さっきまで遊んでいた大人達はピタッと静止し、しんのすけは音のする方へ向かう、音は三輪トラックの行列の先頭からスピーカーで発せられており、しんのすけの後ろから、続々と大人達が荷台へと乗っていく)
しんのすけ、「ななこおねぇさーん!(弾かれる)うぅぅぅ!お?」
(無我夢中で荷台へと大人達が乗っていく、知った顔の人々まで、しんのすけに一瞥も無く、先ほどの園長先生達まで、送迎バスで行列に参加して居た)
しんのすけ、「幼稚園のお仕事サボるなー!!あ!とーちゃんかーちゃん!とーちゃんかーちゃん!どこ行くんだー!」
ひろし&みさえ、「しぇー!!!」
しんのすけ、「うぇっ?」
(壁をよじ登り、トラックの進行方向を進みながら、しんのすけはひろしとみさえを追いかけた)
しんのすけ、「とーちゃんかーちゃん!(段差を飛ぶ)たっ…!(走る)おーい!(車の速度が上がる)あぁ!返事ぐらいしてよ!…無視すんな!!(壁にぶつかる)…うぅ」
(ついぞ、最後まで停止する事も無く、風のようにトラックの行列は去っていった)