受付員、「はい、初めてでいらっしゃいますか?当20世紀博には、20世紀のあらゆる物を販売するショップ、懐かしい遊びを心ゆくまで楽しんで頂ける広場、子供の頃に憧れた、あのヒーローやヒロインになれるスタジオ、懐かしい味が味わえるレストラン等があり、お客様が、お客様自身のあらゆる思い出と出会える場でございます、どうぞ、子供の頃に帰って、心ゆくまでお楽しみください」
出迎え員、「20世紀博へようこそ!」
<劇中歌、ケンとメリー>
ひろし、「いやー面白かったな!」
みさえ、「春日部に20世紀博が出来てホント良かったわね」
しんのすけ、「ちっとも良くないぞ!いっつも二人だけで楽しんで、いーっぱい買い物して!たまには違うとこ連れてけー!」
ひまわり、「けー!」
ひろし、「最近昔の車が増えたよなー」
みさえ、「みんな20世紀博で遊ぶだけじゃ物足りなくなったんじゃない?」
ひろし、「うおー!カッコいい!うちも古い車に買い替えるか?」
みさえ、「いいわね」
店員、「アナログレコードが大量入荷しました!」
みさえ、「あー!イカすー!」
ひろし、「春日部もいいカンジになってきたな…!」
(野原邸)
しんのすけ、「ねぇ、とーちゃーん?」
ひろし、「よし行け!ヒーローSUN!」
しんのすけ、「おらアクション仮面のビデオが見たいんだってば!」
みさえ、「ダメよ次は私が魔女っ子サユリ見るんだから」
しんのすけ、「アクション仮面ー!!」
ひろし、「しんのすけお前も見ろ!アクション仮面より絶対面白いって!」
ひまわり、「あぃあぃ」
みさえ、「ひまちゃんも、後でママと一緒に魔女っ子サユリ見ましょうねー?」
ひまわり、「たぁ?」
みさえ、「あ!ねぇ、今夜テレビで20世紀博からの大事なお知らせがあるんじゃない?」
ひろし、「そうだ、何時だっけ?」
(20世紀博、春日部本部…その館内では、多くの隊員が様々な機器で計測を続けていた)
オペレーター、「オンエア、30分前」
ケン、「21世紀もあと30分で終わりか」
チャコ、「短かったわね…」
ケン、「俺にとっては十分長かったよ、チャコ、現実の21世紀の放つ匂いは、俺には耐え難い悪臭だ、一刻も早く、おさらばしたいよ」
チャコ、「出来るよ、ケンの作った20世紀の匂いに、大人たちは皆夢中だもの」
ケン、「当然だ、みんな帰りたいのさ…20世紀に」
チャコ、「未来は失われるのね」
ケン、「未来は常にある、俺達が昔憧れた、夢の21世紀が…」
(ケンはイスから立ち上がり、隊員達に目を向ける)
ケン、「全国の支部を呼び出せ」
隊員、「はっ!…全支部へ、こちら春日部本部、リーダーの訓示だ、聞け!…どうぞ」
ケン、「…我々イエスタディ・ワンスモアは、間もなく悲願の第一歩を踏み出す…我々の時代、黄金の20世紀が蘇るのだ…匂いは十分効いているので、明日から忙しくなると思う…モーレツにな、諸君の、高度経済成長的頑張りを期待している…以上だ、仕事に戻れ」
(拍手が起こる)
ケン、「ココで見るか?」
チャコ、「帰りましょう、私達の町へ」
ケン、「あぁ」
(エレベーターから降り、擬装されたドアから外へ出る、そこでは夕日が照りながら、1970年代を彷彿とさせる、どこか懐かしい街が広がっていた)
<劇中歌、白い色は恋人の色>
チャコ、「ココに来るとホッとする」
ケン、「ココには外に世界みたいに、余計なモノがないからな、昔、外がこの町と同じ姿だった頃、人々は、夢や希望にあふれていた、21世紀があんなに輝いていたのに…今の日本に溢れているのは、汚い金と、燃えないゴミぐらいだ…これが本当に、あの21世紀なのか」
チャコ、「外の人達は、心が空っぽだから、モノで埋め合わせして居るのよ、だから要らない物ばっかり作って、世界はどんどん醜くなって行く…」
ケン、「もう一度やり直さなければいけない、日本人がこの町の住人達のように、まだ心を持って生きていた、あの頃まで戻って…」
チャコ、「未来が信じられた、あの頃まで…」
(夕焼けをケンとチャコは見つめていた)
チャコ、「外もこんなだったら良いのに…」
ケン、「いずれなる」
チャコ、「切なくて、素敵…」
(そして…時計の針は八時を指す…オンエアの時が、始まる)